「現代のアイドルとしてのAKB48」(6)

26 現在メンバーがファッション誌やイベントに登場したりブランドのイメージキャラクターに選ばれたりと、男性だけではなく女性へ向けた活動が活発化している。恋愛ゲーム『AKB1/48アイドルと恋したら…』が発売された際、通販サイトの楽天市場が調査したところ購買者の約2割が女性であった。YouTubeではダンスをコピーした映像をアップロードする女性も多く、同性からの支持や関心が高まっている事がわかる。この事からレポートを書くにあたって「女性アイドルにおける同性ファンの心理とは何か」という部分に着目した。
 現在、音楽を聞く手段として携帯電話の着うたがある。日本レコード協会が09年に行ったユーザー調査によるとその利用率は女性が圧倒的に高く、幅広い年齢層に利用されている。昨年の着うたランキングでAKB48の楽曲は100位中25位が最高位で、上位は女性アーティスト等が占めている。この事から女性たちにとって、同性のアイドルにおいては楽曲以外に求める物が多くあるのではないかと考えた。
 まず、ファッション等の見た目が与える影響がある。女性ファッション誌でコーディネートを紹介したり、着用した衣装の柄が流行したり、容姿の面で与える影響は大きい。ダンスにおいては可愛らしく、覚え易いという点でコピーする人が多いのではないか。しかしこの見た目以上の精神的な面での理由があると考えた。
 常に多くの比較対象がいる、女性だけの集団の中でメンバーにとっては自分の個性をいかに発揮し、役割を見極めるのかが重要となる。この行為は私たちの普段の生活と重ねる事ができる。私たちも所属するコミュニティの中で同様の行為を無意識にしているのだ。「集団の中の1個人」として共感し、自分と近い役割、または憧れとなるような存在を見つける事もできる。メンバー達が同性だけの集団の中で競い合いながら成長していく姿を自分に重ねられる部分に、女性から支持の理由があると思う。
 アイドルが一人の女性としてどのように成長し、集団の中での役割を果たしていくのか。精神的な面でメンバーを身近に感じ、その中に自分自身を見つけようとする事が同性のアイドルに対する女性ファンとしての心理であり、支持の理由なのだと考えた。

27                 今や国民的アイドルとも言われているAKB48。どうして今こんなにも人気があるのか。私はその理由として二獣類のファンがいることが挙げられると思う。

1,地下アイドルのAKB48
 AKB48に関して歌やダンスのプロ集団を目指しているのではなく、可能性を集めて成長する過程を見せているというファンの意見が存在する。これはメディアを通して「理想的な女の子」をファンに見せていた従来のアイドルとは異なり、その前の状態、つまり本来であればメディアに出す以前のアイドルの状態をAKB48は今現在メディアを通して私たちに見せているということである。 アイドルオタク、特に地下アイドルと呼ばれる劇場公演型のアイドルのファンたちはまだ「未完成な女の子」を応援し、自分たちの応援によって大きくなって行くことに喜びを感じる。アイドルとして「成功」したらそのファンをやめて新人アイドルのファンになる、という人もいるくらいだ。昔からAKB48を支えてきたのはやはりこのようなアイドルオタクたちだったと言えるだろう。

2,『理想的な女の子像』の消失
 では、「アイドルオタクではないAKB48のファン」とはどのような人々なのか。まず、従来のアイドルとは、「理想の女性像」を提供する存在だったといえるだろう。それは、控えめで男性を立てるといった「大和撫子」のような像だったのではないかと思われる。しかし近年ではもはやこの「大和撫子」を見ることはほとんどない。それどころか、「のだめ」や「ホタルノヒカリ」のようにだらしのない女性像がメディアに載って認知され、またそれに共感する女性まで出てきてしまっている。これは女性の社会進出に伴って、「男性と結婚して家庭を守ることが女性の幸せ」という価値観がもはや古い考えになってしまったせいではないかと思う。男性に養ってもらわずとも生活できる女性が増え、もはや男性の理想とする女性像を演じる必要がなくなってしまったのである。化けの皮がはがれた女性たちを見て「大和撫子」を知る男性たちは批判もしただろうが、世代が変わりそんな女性を見て育った世代はもはやそれが「普通」になってしまい、現実的になり、「理想の女の子」は自分の世界にはいないことを悟ってしまったのではないだろうか。
 また、「会いに行けるアイドル」がコンセプトのAKB48は「ファンとの近さ」を売りにしている。これは劇場に行けば会えるという物理的な近さの他に、「クラスで5~10番目に可愛い女の子」を集めたというAKB48が従来の「高嶺の花」のような存在だったアイドルと比べて親近感もてるという心理的な近さも含んでいる。つまり、「高嶺の花を本気で応援してるのではなく身近な女の子について可愛いとコメントする」というような気軽さを持ってAKB48のファンを名乗ることができるのである。私は、AKB48のファンの多くはこのようなライト層ではないかと思っている。

3,まとめ
 これらのことから、AKB48は「成長過程を見せる」ことで従来のアイドルオタクを、また「気軽に」ファンにすることで「理想を信じない」年代から人気を得ることに成功している。ゆえに、AKB48が今後も人気を継続していくためには、後者は「気軽に」他のコンテンツへ興味を移してしまうライト層、もう一歩踏み込んだ「ファン」にすることが必要である。しかし、彼女たちが成長しきり、本当の「アイドル」になる日はくるのだろうか。

28              AKB48とは「競争と自虐から生まれる“リアル”なキャラクター工場」なのではないだろうか。
彼女たちの活動に付きまとうのは “競争”だ。選抜総選挙や派生ユニットへの参加など、ファンからの人気や運営側の期待値が目に見え、常に競い合う環境にいるためだ。
しかしそこには、もう一つの側面“自虐”が隠れている。例として、メンバー総出演のドラマ『マジすか学園2』第2話での台詞が挙げられる。場面は、渡辺麻友扮する“ネズミ”と、4人のアンダーガールズ(主にシングル曲選抜から漏れたメンバーで構成される、カップリング曲を歌うためのユニット)からなる“チームアンダー”の対決。あっさり倒されうずくまるチームアンダーに、ネズミは「そんなんじゃ、いつまで経ってもアンダー止まり。他人の背中しか見えねぇんだよ!」と言い放つ。昨年の総選挙5位の渡辺とチームアンダーの4人は同期だが、順位やメディアでの露出度は渡辺が4人を見下ろす形になる。物語とはいえ、シビアな現状を演じている彼女たちに自虐性を感じずにはいられない。また、このドラマの企画・原作は秋元康であることから、こういった場面を設定する制作側にも自虐性を見て取れる。他の番組でも様々な“自虐”を見ることができるが、それが結果として個人のキャラクター(役割 ex.ヘタレ、スべるなど)を明確にしている。つまりAKB48は、競い合わなければならない状況の中で、あえて自分を貶める“自虐”ネタを用い、各々が唯一のキャラクターを作り上げようとしているのだ。何故なら、そのキャラクターこそが生きる術となり、“競争”に勝つ武器となるからだ。
競争社会を悩みながらも進み、かつさらけ出した姿は「完成された製品としてのアイドル」像を保とうとしていた時代に比べてより身近に、より現実的に「リアルな存在としてのアイドル」を感じさせてくれる。だが同時に“自虐”を推し進め、キャラクターをピンポイント化することは “リアル”をどんどん一面的にし、リアルを見る(見せる)機会を奪う危険性をはらんでいる。こうした危険は身の回りにも潜んでいるように思えてならない。そういう点ではアイドルも一般人もあまり変わらないのかもしれない。

29                 素人っぽさをうりにして居るAKB。これは人気になるべくして人気になったのではないかと私は考える。
現代はとかくつながりを求める時代である。いや、もしかしたら現代だけではなく昔からそうなのかもしれないが、ここでは現代に限って考える事にする。
私はアンダーグラウンドの世界と現代のアイドルとしてのAKBは共通点が多いにあると考えている。それは「つながり」という点に於いて最もよく考える事が出来る。
アンダーグラウンド(以下アングラと略させていただく)の世界は、いつも「つながり」を求めてきた。60年代ではロックンロールを通した飲み屋にたまりつながりを求め、70年代で言えばドラッグやヒッピー系と言った服装でアングラ系の若者は仲間意識を通してつながり、80年代~90年代になればSMやハプニングといったものを通じて奇抜な恰好でクラブに集まり、昨今でもフェティッシュやアニメ等の趣味を持った者が奇抜な服を着て同じ趣味を持った仲間と繋がっている。
つまり、現代のアングラは素人のつながりを求めているのである。
AKBはもちろんプロのアイドルではあるが、素人っぽさ、そして「会いに行けるアイドル」として劇場でほぼ毎日公演をしている。しかも舞台はライブハウスや小さなクラブの様であり、観客との距離が非常に近く、また特別過ぎる、大規模な演出がない。
つまりAKB全体としては、プロの様に特別な時に、特別な感覚でしか会えないのではなく、AKBというショーガールがレギュラーパフォーマーとしているお店にいるという感覚に近いのではないか。
劇場にいくファンは、ファン同士でつながり、また好きなパフォーマーを近くでみる事ができる。それはクラブに行く客と似た感覚なのではないかと私は考える。
また、素人っぽさというのも現代のアイドルとしては重要である。
AKBの衣装は基本的に制服や私服(水着)をモチーフにしている。これが素人っぽさを出す上で大きいと私は考える。
一斉を風靡し、まだまだ根強い人気を誇るハロープロジェクト(以下ハロプロ)は、間違いなくプロのアイドルである。先程述べた様なAKBの劇場の様に気軽に会いに行けないという事も会ったが、彼女達がプロなのはやはり衣装にあると思う。
ハロプロは、曲のテーマに合わせて衣装を変えている。例えばエスニックな曲調ならばエスニックな衣装、夏の歌ならば船員、歌詞にジーンズと入ればデニム生地を使うなど、徹底している。
パフォーマンスをする人、プロのパフォーマンスをみたい人の常識として世界観を徹底して固定し、引き込むというものがある。つまり、彼女達はパフォーマーとして、非日常の中で完璧に生きている。
非日常のものとは勿論つながることは不可能であり、またお互いに大多数はそれを望んではいない。
しかしAKBはどんな曲でも制服や私服(水着)がモチーフの衣装であり、世界観を徹底することはない。これが観客にもパフォーマーにも一部日常の感覚を感じさせる事ができるのである。つまり、学芸会の様な感覚になるのではないか。
学芸会は「内輪のもの」である。つまり、出演者と観客は繋がっていて、観客同士も繋がっている事がある。
出演者と繋がっていれば観客はなんだかほほえましい感覚になり、パフォーマンスがイマイチでも笑ってその努力を認めてしまう。
また、観客同士がつながることで「内輪ネタ」で楽しむ事ができる。
つまり、AKBのファンはパフォーマンスを求めているのではなく、内輪の用語が沢山あったりする事から、つながりを求めているのではないかと私は考える。
そしてAKBは現代のアイドルとしてパフォーマンスというよりもつながりを提供しているのではないだろうか。
つながりはアングラの世界で重要なものであり、また人がアングラの世界の「住人」となる大きな要因である。
AKBのファンはもしかしたらアングラの世界にはまる可能性が大きいのかもしれない。また、AKBがもしメジャーなものでなくなったとしてもアングラ文化として進化し得る可能性は十分にあると私は考えている。

参考文献:下関マグロ著 東京アンダーグラウンドパーティ 二見書房 2006年

30 今回は、AKB48における「推し」の存在について述べてみようと思う。
「推し」とは、ファンの中で使われる専門用語で、自分がどのメンバーを一番に応援しているかを表すときに使用される。「推し」は一般的に一人で、二番目に応援しているメンバーを「二推し」と表現することもある。
なぜ「推し」という表現が存在するのであろうか。何も応援しているメンバーを一人に絞ることはないし、「推し」という言葉により周囲に告知する必要も本来はないはずだ。
私はこれを、人間の二つの意識が生み出した言葉なのではないかと考えている。
一つは、日本人特有の集団心理だ。孤立した存在であることを嫌う日本人独特のもので、自分がどの集団に属しているのかを確認したがる。自分がAKB48の中の「あっちゃん推し」という集団であることを示すことにより、自分自身が一人ではない、何らかの集団に属している存在であるということを確認する意識が 働いているのだと私は考えている。
二つ目は、集団の中に埋もれたくないという自己顕示欲の現われではないかと思う。「推し」や「担当」という言葉が使用される対象のアイドルは、ファンのコミュニティが比較的大人数であることが多い。そのため、自身の存在というものをなかなかアピールしにくい。しかし「推し」という言葉を使用することにより 、AKBファンという大きな集団が、あっちゃん推しという集団にまで狭まる。その分自身の所属がはっきりするのだ。
この二つの意識は、何も「推し」という言葉だけに表れているのではない。例として、「推し歴」というものがある。自分がその推しをどれだけの間応援しているか、ということを示す際に使われる言葉だ。推し歴が短ければ短いほど、ファンの中での地位は低いものとされる。このようなファン区分もまた、上記二つの 意識のもとに生み出された区分なのではないかと私は考える。
今、AKB48のファンという集団は拡大し続けている。拡大すればするほど、ファンたちは「推し」や「推し歴」で自分達を区分し、自分の地位の確立を図る。そのような行為により、ファンたちは満足を得ているのではないだろうか。
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by kmr-sato | 2011-05-11 05:59


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